自動車や航空機の生産ラインが止まり、スマートフォン用部品の出荷が遅れています。バングラデシュの工場への衣料品の発注は少なくとも30億ドル相当がすでにキャンセル、あるいは保留となっています。そして3月の全世界の民間航空便の運航は前年同月比55%減となり、オーストラリア政府は牛肉などの生鮮食品をアジアや中東の主要輸出先へ届けるためにチャーター便を手配する事態に陥っています。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、生産者と消費者の双方に世界に広がるサプライチェーンの円滑な運営にいかに依存しているかを再認識させただけでなく、世界が一部の重要な製品の供給を1~2か国に依存している現状を明らかにしました。例えば、医薬品の有効成分の生産やジェネリック医薬品の製造の大部分が中国とインドに集中しています。
目下、世界のGDPの50%に相当する国々が人の移動を制限し、密接に結びついた世界経済の重要部分が麻痺しています。そしてサプライチェーンが停止すれば、それに伴うキャッシュの流れも滞ります。その結果、数日分の在庫および数週間ないし数か月分のキャッシュによって事業を継続する状態に慣れている企業に、突如思いがけない難題を突きつけます。
BNPパリバのファクタリング・サプライチェーンファイナンシング責任者、ピエール・デ・コルタは次のように述べています。「流動性の管理とは財務効率を向上させることであり、うまくやれば少しずつ利益を積み上げることができます。しかし現在のような過酷な状況下では、流動性の管理は極めて重要な問題となり、一部の企業では組織の存続に関わっています」
「取引金融機関からの支援は以前にも増して重要になっています。金融機関は、通貨ファシリティの設定や金利リスク管理などの面においても企業をサポートできます。」 – BNPパリバ、グローバルマーケット、台湾コーポレートセールス責任者、ワイニー・チャン
「新型コロナウイルスによる経済の混乱に対応するため、企業は取引銀行に対して流動性の管理と運転資本の有効活用について支援を求めており、その多くが将来の混乱にも備えられる、より多様性のあるサプライチェーンの構築も視野に入れています」
BNPパリバのグローバルマーケット台湾コーポレートセールス責任者、ワイニー・チャンによると、金融市場で前例のないボラティリティが生じており、企業にとって外部流動性の確保が難しくなっています。各国中央銀行が政策金利の引き下げに動いているものの、資金調達コストの予測も困難となっており、「取引金融機関からの支援が以前にも増して重要となっています」
続けて「BNPパリバでは、既存のヘッジ契約を改定することで、サプライチェーンの混乱に直面した法人クライアントを支援しています。これにより、ポジションをある地域から別の地域へ移し、不測のニーズに対して資金を調達できます。金融機関ではクロスボーダー通貨ファシリティの設定や金利リスク管理についての専門的なアドバイスを提供することができます」と述べています。
キャッシュを急遽確保
ピエール・デ・コルタによると、十分な運転資本を確保するため売掛債権を活用した資金調達を行うクライアントが増えています。これは、支払い期限が1~2か月先の請求書を即座に流動性資産として利用するものです。「外貨エクスポージャーを抑えたい、あるいはキャッシュを本社に戻したい企業にとって、資産を流動化できる売掛債権を活用したファイナンスは特に有用です。この手段を用いた場合、グループ会社間融資に伴う複雑さがなく、特定の事業体に対し資金を直接供給でき、為替ヘッジコストを回避することができます」「流動性の管理とは財務効率を向上させることである」 – BNPパリバ、ファクタリング・サプライチェーンファイナンシング責任者、ピエール・デ・コルタ
「企業にとって自社の運転資本を管理することはもちろん重要ですが、BNPパリバのクライアントの多くは主要サプライヤーが事業継続に必要な流動性を確保するよう注力しています。多くの大手企業がサプライチェーンパートナーにいかに依存しているかを痛感し、共に嵐を乗り越えるなかで基幹サプライヤーを支援したいと考え、そして私たちもクライアントのサプライチェーンを守るお手伝いをしたいと考えています」とピエール・デ・コルタは述べています。
このことを念頭に置き、BNPパリバでは銀行の顧客が保有する売掛債権(その相手先もまたBNPパリバ銀行の顧客)を活用したファイナンスを行っています。「お客様のお客様もまた私たちのお客様であることから、円滑に対応しています。つまり、BNPパリバのクライアントは戦略的サプライヤーに対して直接流動性を提供できるのです。その結果、BNPパリバのクライアントとサプライヤーとの関係が強化され、長期的なメリットへとつながるのです」
新型コロナウイルス危機によりサプライチェーンはどう変化するのか、議論は続いています。外国で課される制限によるリスクを抑えるため、企業は自国生産に集中すべきと主張する意見もある一方、その場合には自国での衝撃にサプライチェーンが不必要に影響を受けやすくなるとの反対意見もあります。
ピエール・デ・コルタによると、多くの企業がすでに、サプライヤーのサプライヤーや直接の仕入れ先を含むサプライチェーン全体を包括的に見直しています。その結論の一つとして考えられるのが、サプライヤーネットワークの分散化です。これにより、どこか一つの経済圏で起きた混乱に過度に影響を受けるリスクを抑えることができます。
サプライチェーンの分散が進めば、企業はより迅速にリスクを管理できるようになりますが、これに伴い金融ニーズにも変化が生じる可能性があるとワイニー・チャンは指摘します。「クライアントが新規市場から調達を始めると、ポートフォリオ内に新たな通貨リスクや金利リスクが生じることになります。BNPパリバは専門エコノミストやストラテジストの知見と世界中の現場に則したトレジャリーソリューションを駆使して、クライアントの新規市場への事業拡大を支援します」
※本記事は英語で発行された記事の抄訳となります。原文をご覧になる場合はこちらをクリックしてください。