本邦におけるエネルギー・トランジションの資金調達

東京都は今回7度目となる「東京グリーンボンド」を発行し、日本におけるエネルギー・トランジションにおける先導的な地位を確実なものとすることとなりました。

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東京首都圏は、世界で最も人口が多い大都市圏であり、日本の全人口の25%程度が集中しているため、東京都のサステナビリティへの取組みは日本の脱炭素社会への移行に大きく貢献するだけでなく、日本以外のその他都市圏の指針になると考えられます。

順調に進む東京都のサステナビリティ戦略

今回の東京グリーンボンドの発行は、経済活動に環境施策を組込むという東京都が推進する長期的な戦略が順調に進んでいることを明確に示すものです。本年 10月、東京都は第7回目のグリーンボンドを発行し400億円(約2億7,100万米ドル)の調達に成功しています。これは、発行体にとって新型コロナウイルス感染症対策の制限が解除されて以降、初のグリーンボンドとなりました。 

BNPパリバの資本市場部長 大谷敏明氏は、「今般の東京グリーンボンドの発行で注目する点は、新型コロナウイルス感染症に起因する混乱を経験してなお、東京都が持続可能性というアジェンダへのコミットを継続していることである」と説明しています。

Toshiaki Otani

今般の東京グリーンボンドの発行で注目する点は、新型コロナウイルス感染症に起因する混乱を経験してなお、東京都が持続可能性というアジェンダへのコミットを継続していることである

BNPパリバ 資本市場部長 大谷敏明

本起債の調達資金は、省エネルギー対策、再生可能エネルギーの活用、気候変動への適応に関する取組みなど、東京都グリーンボンド・フレームワーク内で示されている対象事業へのファイナンス及びリファイナンスに充当される予定となっており、対象事業は、昨年度の17事業から22事業へ拡大しています。増加した充当予定事業には、公営住宅における太陽光発電設備の設置事業や再生可能エネルギーの活用に向けた蓄電池設置事業などが含まれます。

なお、今回債は前回のグリーンボンドからちょうど1年での発行となっており、前回債では300億円(2億1,400万米ドル)を調達しています。

サステナブル債の継続的な発行体

グリーンボンドの発行経験豊富な東京都は、国内地方債発行体のリーダーとして先導的な役割を担ってきました。2017年に国内の地方自治体で初めてとなる「東京グリーンボンド」を発行して以降、年一回の発行を継続しており、これらの債券の管理に関する包括的なフレームワークも保持しています。この東京都グリーンボンド・フレームワークは、国際資本市場協会(ICMA)が公表するグリーンボンド原則(資金使途、対象事業の評価・選定プロセス及びレポーティング要件について規定されている)に準拠するものとなっています。

東京都は環境施策のための資金調達を継続するとともに、2022年に東京都環境基本計画を改訂し、2050年までのネットゼロ、及び2030年までに都内温室効果ガスを50%削減する「カーボンハーフ」を目指した取組みを加速しています。 

具体的な取組みの例として、東京都が保有する施設は、2030年までに再生可能エネルギーで100%賄うこととし、これにより、2030年までの都有施設合計の太陽光発電設備累計設置量を74,000kW(2021年には27,055kW)とする目標を設定しています。

サステナブル・ファイナンスに再注目

東京都のグリーンボンド発行は、日本のエネルギー・トランジションにおいてサステナブル・ファイナンスが重要な役割を果たす、という国家レベルで再確認された声明に沿ったものとなっています。10月に開催されたPRI in Person 2023フォーラムにおいて、日本の岸田文雄総理大臣は「化石燃料から脱却し、クリーンエネルギーにシフトすべく産業、社会構造を変えていくことは大きな挑戦ながら、同時に成長のチャンスでもある」と述べています。

主要投資家が集う中で岸田総理は、日本のグリーン・トランスフォーメーション(GX)の枠組みの下で、どのようにして世帯貯蓄をグリーン投資に移行させるのか、どのようにしてCO2排出量削減を通じた経済発展の実現に向けて機関投資家からの資金を呼び込むことができるのかについて説明しました。2050年のネットゼロ実現に向け、日本は今後10年間において、官民合計で150兆円(1兆米ドル)の資金調達を見込んでいます。

なお、財務省は本年11月に、2023年のGX国債マーケティング・サポーターの1社としてBNPパリバを選定したことを公表しています。外国金融機関の中で選ばれた2社のうちの1社として、BNPパリバはESGにおける豊富な知見を活用し、国外の投資家を対象に一連の債券投資家との対話の場を設ける予定です。

エネルギー・トランジションに対する国のコミットメント 

2023年は日本の公的機関によるエネルギー・トランジション関連の支出のための資金調達が加速した1年になりました。

例えば、国内の地方公共団体の共同資金調達機関である地方公共団体金融機構は2月に5年固定利付グリーンボンドを発行し、5億ユーロを調達している他、直近の9月には、日本政策投資銀行が、適格事業や適格企業への融資に充当されるサステナビリティボンド5億ユーロを調達しています。

BNPパリバが共同主幹事を務めたこれら2銘柄の起債は、投資家から高い関心を集めることに成功しました。

日本の発行体による継続的な外貨建てサステナブル債の発行は、その他の公的機関や企業による同債券の発行を喚起するものであり、日本のエネルギー・トランジションへのコミットメントを反映するものです。同時に、世界第 3 位の経済大国である日本がグリーン化を実現することは、アジア及びその他地域にも大きな影響を与えることになると考えられます。